中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

恩田陸「夜のピクニック」

夜を徹して八十キロを歩き通すという、高校生活最後の一大イベント「歩行祭」。生徒たちは、親しい友人とよもやま話をしたり、想い人への気持ちを打ち明け合ったりして一夜を過ごす。そんななか、貴子は一つの賭けを胸に秘めていた。三年間わだかまった想いを清算するために―。今まで誰にも話したことのない、とある秘密。折しも、行事の直前にはアメリカへ転校したかつてのクラスメイトから、奇妙な葉書が舞い込んでいた。去来する思い出、予期せぬ闖入者、積み重なる疲労。気ばかり焦り、何もできないままゴールは迫る―。

(「BOOK」データベースより)

51点

 

あまり好きな作品が今のところ見つからない恩田陸作品。
第二回本屋大賞受賞作。


夜を通して80キロを皆で歩く高校生活最後のイベント「歩行祭」。
貴子はこのイベントである一つの賭けをしていた。
様々な思惑をはらんで歩行祭はスタートする…。

青春ど真ん中の主人公達の思いを、特殊なイベント「歩行祭」というシチュエーションで進行させるという内容はリアリティがある。
歩き始めの心理から、疲労で口数が少なくなる深夜、そして解放感のあるゴール間近。
人間の本質が出やすい環境で、少しのようで彼らにとって劇的に変化する関係は納得がいく。

貴子と融の関係が物語の主軸だが、周囲のストーリーもよく練られている。
海外に行った友人の榊とその弟、忍と融の関係、様々な恋模様。
高校生最後のイベントである歩行祭を想像した時に、誰しも修学旅行や学生時代に感じた事のあるエピソードが詰まっている。

ただ個人的にはアクセントになる高見のキャラクターがあまりに寒々しくて、彼が担った役割を発揮出来ていなかったように感じた。
書かれた年代を考えても、このポジションのキャラクターとして無理があるというか、端的に言うと古い。
彼のキャラクター設定次第では物語の幅がさらに広がったのではないか。

またリアリティはあるし、暖かい作品ではあるが、少し冗長に感じた所もある。
体験した事がないにも関わらず、懐かしさを感じさせる歩行祭の描写は冴えわたっているだけに残念。