中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

米澤穂信「春期限定いちごタルト事件」

小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。

(「BOOK」データベースより)

84点

 

非常に爽やかで小気味良い。

キャラクターも魅力的な中々の作品。

 

まず小鳩君と小佐内さんの関係が非常に良い。

恋愛関係でもなく、ただの友人でもない。

二人とも過去に何かの出来事を抱え、その過去から成長しようと二人だけで助け合っている。

それも高校生が成長したいと思う程度のライトさで。

その二人の関係と日常の謎テイストの推理小説部分が非常に上手く溶け合っている。

 

また主人公二人のキャラクターもいい。

傍観者的に勤めるが、頭の良さが災いして傍観者でいられなくなってしまう、そしてそれをどこか望んでいる小鳩君。

地味だが時にエキセントリックで、甘いものには目が無い小佐内さん。

共通の不思議な価値観で関係を構築している二人は、差し詰め微笑ましい「GOTH」と言った所か。

 

謎の結末も妙にあっけなかったりするあたりのリアリティも悪くない。

基本、小鳩君の独白の小説だが、ちょっと捻くれた彼の台詞回しにも非常にセンスを感じる。

 

大作ではないが爽やかで小気味良い秀作。

夏期限定トロピカルパフェ事件」も楽しみだ。