舞城王太郎「世界は密室でできている」
「何とかと煙は高いところが好きと人は言うようだし父も母もルンババも僕に向かってそう言うのでどうやら僕は煙であるようだった。」―煙になれなかった「涼ちゃん」が死んで二年。十五歳になった「僕」と十四歳の名探偵「ルンババ」が行く東京への修学旅行は僕たちの“世界と密室”をめぐる冒険の始まりだった!『煙か土か食い物』の舞城王太郎が講談社ノベルス二十周年に捧げる極上の新青春エンタ。もう誰も王太郎を止められない。
(「BOOK」データベースより)
46点
舞城節が炸裂する青春ミステリ。
数々の事件を解決する14才の探偵ルンババ、そしてその友人の主人公。
二人は修学旅行で向かった東京で椿、榎というエキセントリックな姉妹に出会う。
ミステリとしては数々の密室が用意されているが、基本ルンババが簡単に解いてしまうので大きな見せ場は無い。
むしろこの話は中学から高校、大学へと成長していく主人公とルンババの友情物語を中心としている。
展開は舞城節全開で想像しえない方向に進むし、キャラクターは愛すべきながらもかなり気が狂った人ばかり。
ただその中心にルンババと自殺した姉・涼ちゃん、ルンババと主人公、主人公と榎という友情や恋愛や壁の存在があり、ストーリーの軸までぶれる事は無い。
また細かい描写にも魅力は沢山つまっている。
主人公と榎のなんとも甘酸っぱい関係もちょっとした描写に感情がつまっていて面白い。
また個人的には椿の爽快でエキセントリックでバイオレンスなキャラクターはかなり気に入った。
ラストは素晴らしい名シーンで幕を閉じる。
感動的で舞城的で真っ直ぐに愛を叫ぶラストシーンは珠玉の出来。
ミステリが本筋に無関係だったりトリックがパズル的な部分は今ひとつだが、それを差し引いてもなかなかの作品だろう。
メッセージは読み手によって色々と受け取れる作品なので、人によっては珠玉の一冊となるかも。