中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

米澤穂信「愚者のエンドロール」

「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作。

(「BOOK」データベースより)

53点

 

氷菓」に続く古典部シリーズの二作目。

 

2年F組で制作された映画は、脚本家の病気により解決編がない状態だった。

犯行編の映像とスタッフの証言を頼りに、古典部のメンバーは正しい解決編を探していく。

 

いかにも米澤作品らしい、ミステリに対してのメタ的なアプローチ。

犯行編の映像を元に、スタッフが立てた解決編の仮説を聞き、それを論破する流れは面白い。

また、メタ的ミステリと見せかけて、その外側にもミステリが配置されているような伏線作りなど、芸当が細かい。

 

主人公・折木のキャラクターも前作より好感が持てる。

だが今回は里史のキャラクターと台詞回しが非常に面白かった。

その分女子二人の存在感が薄れた事は残念だが。

 

後半に判明する真相に関しては察しが良い読者なら途中で気づくかも知れない。

それ自体は大きな問題ではないが、物語の前提部分のところで、登場人物が気づかない事に違和感を抱く部分が存在する。

千反田からそれを指摘され、折木があせる描写があるが、そんな大前提に何故気づかなかったのかという疑問はかなり大きく残る。

 

古典部としてのまとまりや、意外な人物の介入など面白いところもあるが、作品としては小さくまとまってしまった印象。