中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

佐々木譲「暴雪圏」

最大瞬間風速32メートル。十勝平野が十年ぶりの超大型爆弾低気圧に覆われた日の午後、帯広近郊の小さな町・志茂別ではいくつかの悪意が蠢いていた。暴力団組長宅襲撃犯、不倫の清算を決意した人妻、冴えない人生の終着点で職場の金を持ち出すサラリーマン…。それぞれの事情を隠した逃亡者たちが辿りついたペンション・グリーンルーフで、恐怖の一夜の幕が開く。すべての交通が遮断された町に、警察官は川久保篤巡査部長のほかいない―。超弩級の警察小説。

(「BOOK」データベースより)

47点


「制服捜査」に続く川久保巡査シリーズ。
北海道の小さな町を舞台に吹き荒れる暴雪とそれに翻弄される人々を描く。

十勝平野爆弾低気圧、通常「彼岸荒れ」に襲われた。
交通網が完全に麻痺し、事故が多発するなかで様々な人間の思惑が交差する。

正直、この作品においては「BOOK」データベースの解説はネタバレに近い。
この作品の見所は様々な思惑で動く登場人物達が、彼岸荒れの影響で後半に入ってペンションに集まる部分にあると思う。
この後発的なクローズドサークルの形成は、暴雪のリアリティもあり非常に面白い。

出会い系サイトでの不倫を清算したい主婦・明子と痴態を携帯で撮影した不倫相手・菅原、胃ガンで先が無い中で職場の二千万を盗んだ会社員・西田、暴力団組長宅を襲撃し二千万を持ち出した犯人の片割れ・佐藤、認知症の義母を北海道に迎える事に抵抗するペンションオーナー増田とその妻、義父に暴行され逃げて来た少女・美幸とその少女がヒッチハイクしたトラックの青年・山口、そして旅行で訪れた老夫婦・平田。
ペンションのボイラーは壊れて、修理に来れない為にレストランスペースでしか暖の取れないという設定。
これだけの内部キャラクター要素と、暴雪の中で移動すら出来ない川久保巡査、麻痺した警察、西田の手には事故を起こし車の下敷きになった強盗犯から預かった金、そして事故った強盗犯の元に向かえない救助、川に埋もれた謎の白骨死体と不倫相手菅原や強盗に入られた組との関係。
凄まじくワクワクする展開が予想出来る中盤である。
しかしここからのまとめが全く上手くない。
内部抗争の要素をクローズドサークルで扱えない上、ラストまで宙ぶらりんの伏線も多い。
美幸の設定や西田の設定はもう少し活かして、ラストまできちんと描いて欲しかった。

また前作に比べると川久保巡査の出番は少ないし、キャラクターも少し変わった気がする。
前作は短編でいくつも事件を解決したが、今回は長編な上に複数視点なので出番が少ないのは仕方がないのだが。

自然災害ものとして面白いし、文章力は抜群。
しかし複数の構成要素を後半で上手く処理出来なかったのは残念。
川久保巡査ものではなく、書いても良かったような気もするが。