中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

伊坂幸太郎「モダンタイムス」

漫画週刊誌「モーニング」で連載された伊坂作品最長1200枚。

(「BOOK」データベースより)

56点

 

「魔王」の続編に当たる伊坂作品。

伊坂至上最も長いというが、それほどの量ではないと思う。

 

SEをしている渡辺の元に拷問屋がやってくる。

彼の浮気を疑って妻がよこしたプロだ。

そんな恐妻家の渡辺は先輩の五反田が失踪してしまった作業の後を引き継ぐ。

そこには特定の検索ワードを調べると引っかかる巧妙な暗号化システムが仕掛けてあった。

それを調べていく中で、彼の周りで不穏な出来事がおこり始める。

 

まず妻のキャラクターが痛快。

前半の恐怖の妻であり、何を考えているか分からないという渡辺の一人称描写から、後半登場してからの頼もしくなっていく流れは面白い。

軸ではないが、この小説に味付けとなって加わっている。

 

また安藤兄弟のその後が分かるのも非常に面白い。

50年余経った世界なので、すでに年齢を重ねた安藤詩織も登場する。

 

メインのストーリーとして展開するのは検索から始まる国家的なシステムの話。

そこにちょっとした人間ドラマなどが加わるのは伊坂的にはお得意の展開か。

 

強引さは以前の作品ほどは感じなかったが、主題が少し弱いので全体としてここという見所が無かったのは残念。

テーマやメッセージは伝わったが、やはりエンタテインメントとしての面白さを伊坂作品には求めてしまう。