中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

真梨幸子「殺人鬼フジコの衝動」

一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。だが、彼女の人生は、いつしか狂い始めた。人生は、薔薇色のお菓子のよう…。またひとり、彼女は人を殺す。何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?あとがきに至るまで、精緻に組み立てられた謎のタペストリ

(「BOOK」データベースより)

47点

 

十人以上を殺害した殺人鬼・フジコ。

なぜ、彼女は殺人鬼となったのか、それが一冊の小説として語られていく。

 

最初からかなりハードないじめの描写が続き、子供独特の出口のなさが描かれる。

これは小説にはよくあるシーンだが、この作品の描写はそれに輪をかけてきつい。

女同士のグロテスクな部分を書かせたら、この人ほど濃厚にかける小説家も少ないだろう。

読んでいて心が痛くなるほどハードな描写が小学校、中学校と続く。

 

そこからの主人公の行動にはかなり疑問が残る。

男性不審を確実に抱くような経験がありながら、男に走ったり。

かなり謎な部分があるが、これは記憶の欠損で結論付けられるのだろうか。

 

またここからのストーリーを読んでいくと、不幸さから心を病み、独特の観念に基づいた思想を抱いた殺人鬼として描きたいであろう作者の意図と、あきらかにサイコパスとしての資質を持った殺人鬼の実像に矛盾を強く感じる。

特に後半の加速度的な展開が、前半の丁寧な描写と比べ、明らかに薄っぺらく感じてしまう。

ラストのミステリ的な仕掛けも、伏線が足りず説得力に欠けた上に、予想もついてしまうという二重苦。

 

とはいえ描写力を見れば、さすがという内容。

重く沈んだ気持ちになるのを覚悟で読んでみるのもいいかも知れない。