米澤穂信「ふたりの距離の概算」
あいつが誰かを傷つけるなんて―俺は信じない。すれ違う心の距離を奉太郎は解き明かせるのか。“古典部”シリーズ最新刊。
(「BOOK」データベースより)
52点
古典部シリーズ第五弾。
新入部員が突然退部したその理由を探す青春ミステリ。
今回は二年生の五月、マラソン大会でのエピソード。
前日に突然退部を言い出し去った新入部員・大日向。
マラソンをしながら、奉太郎は過去のエピソードを思い出し、その理由の謎を解いていく。
この作品は全体を通してマラソンをしながら考える奉太郎。
そして、総務委員でマラソンを管理する里志、後続でスタートした摩耶花と千反田からのヒントで構成されている。
その間に日常の謎的な過去のエピソードが織り込まれていく。
"入部受付ではこちら"では新入生勧誘のイベントでのちょっとしたミステリが描かれる。
サブキャラクターとして製菓部のメンバーが久々に登場。
大日向との出会いが描かれる短編だが、ミステリ的には多少無理のある作り。
"友達は祝われなきゃいけない"は奉太郎の誕生日を祝う古典部員のエピソード。
千反田と奉太郎のちょっといいエピソードが見所か。
前作から人間関係的な進展もあり、そのあたりも面白い。
マラソンをしながらの安楽椅子探偵・奉太郎の活躍もなかなかのもの。
しかし、最終的なロジックの組み立てに無理を感じるところがあり、結論部分も今ひとつピンとこなかった。
古典部シリーズとしての雰囲気は楽しめるが、ずば抜けて面白いエピソードも無く、全体のまとまりも今ひとつといった感じ。
マラソンと言う限定された空間・時間での推理というステージは面白いと思うが、飽きさせない為には間に入るエピソードにもう少し秀逸なものがあればと。
古典部自体への愛着も第五弾までいけば沸いてくるのでそれなりに読めるが、それ以上を期待すると物足りなさも残る。