中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

東野圭吾「ガリレオの苦悩」

湯川の頭脳に挑戦してくる犯人たち。科学を殺人の道具に使う人間は許さない―絶対に。

(「BOOK」データベースより)

72点

 

ガリレオシリーズ短編集。

個人的にはいままでの短編集で最もいい出来ではないかと感じた。

 

まず大きな理由にシチュエーションの画一化から離れた点がある。

草薙が操作にまよい、湯川の下を訪れ、科学でしか解決できない犯行トリックを暴くという一連の流れが変化したということ。

同窓会に出席した湯川に降りかかる犯罪や、旧友の下での事件。

内海をサポートする立場での事件への関与など、多様性が出てきて、事件の結末が見えなくなった。

この変化は大きい。

また科学的なトリックの下にある、人間的な犯行動機や描写を内海の推理から暴く事で、ストーリーに深みも出た。

 

トリック自体に不可能性や矛盾を感じる部分が無いわけではないが、シリーズとして新しい形が生まれた本作。

これからのシリーズ展開が期待できる一作となっている。