矢野龍王「極限推理コロシアム」
二つの館に強制的に集められた七人の「プレイヤー」たちに「主催者」は命じる―「今から起きる殺人事件の犯人を当てよ」―もちろん、被害者もプレイヤーの中から選ばれる。二つの館で起きる事件を、互いにもう一つの館より早く、解決しなければならないのだ。不正解の代償は「死」!過酷きわまるデス・ゲームの幕が開く!究極のサバイバル・サスペンス!第30回メフィスト賞受賞。
(「BOOK」データベースより)
31点
いわゆるデスゲームもので、分類としてはインシテミルのような主催者がいて、その中のルールでデスゲームが行われるタイプの小説。
既存のアイデアに乗っかった上で、一つのアイデアを上乗せした作品…といった印象を持った。
二つの館でおきる殺人事件。
その両方の犯人を当てなければ館から脱出出来ない。
双方の館のうち正解した館のみ生存可能。
お互いの情報はコンピューターごしの通信でしか得られない。
この状況下でいかに推理を進めるかが鍵となってくる。
登場人物の動きにリアリティは無く、この状況下で早々に仲間割れをしだす。
通信される情報にはなぜか真実が多く、ゲームの趣旨とズレが生じる。
また作者の考えた"トリック"に向かって一直線な行動原理には違和感を抱かざるを得ない。
主人公や周囲のキャラクターにも魅力は無く、そこまで簡単なミスにすら気づかない主人公が、ラストで急に天啓を受けて真実を導き出す流れも不自然極まりない。
そもそもデスゲームものは安易に描ける題材ではないと思う。
極限状態下での行動に違和感を抱かせない筆力。
既に使い古されたトリックや行動原理からの脱却。
キャラクターの多様性。
そのあたりをおざなりにして、ルールだけ新しくして、それに符合した面白いトリックを考えた、というだけで描けるものではないと思う。
伏線の回収もおざなりで、今ひとつ納得の出来ない印象。
タイトル負けした作品に感じてしまった。