遠藤 武文「プリズン・トリック」
刑務所内での密室殺人。社会派でありながら超本格。読み落としていい箇所はラスト一行までどこにもない。あなたは絶対に鉄壁のトリックを見破れない。そして必ず、二度読む。第55回江戸川乱歩賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
42点
とある交通刑務所で殺人事件がおこる。
現場は密室で犯人は逃走。
犯行動機も分からぬまま、殺人は連続殺人となっていく…。
交通刑務所内での殺人事件を扱ったこの小説。
評価できる部分もあるが非常に穴の多い作品だ。
大体の事は江戸川乱歩賞選評にあるとおり。
まず視点が多すぎる。
犯人視点から始まり、保険会社の男や刑務官などなど。
バランスも悪く、感情移入がしづらい。
中盤に入る事故被害者とのエピソード自体はリアルでよく描写されている。
しかし、そもそもそんなシーンが必要なのかという疑問も。
トリックもかなり大味な所があり、無理やりヒントを込めた独白にも違和感を感じざるを得ない。
最後のオチもどんでん返しというには弱い。
面白い所もある。
交通刑務所という特殊環境下での犯罪が独白で語られるスタートは期待感を煽るし、人物描写も骨太で本格推理作家としての文章力を感じさせる。
そういった意味では次回作に期待したい作家である。