白河三兎 「プールの底に眠る」
夏の終わり、僕は裏山で「セミ」に出逢った。木の上で首にロープを巻き、自殺しようとしていた少女。彼女は、それでもとても美しかった。陽炎のように儚い一週間の中で、僕は彼女に恋をする。あれから十三年…。僕は彼女の思い出をたどっている。「殺人」の罪を背負い、留置場の中で―。誰もが持つ、切なくも愛おしい記憶が鮮やかに蘇る。第42回メフィスト賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
47点
いわゆるボーイミーツガール物の小説。
過去のセミと僕。
そして現在の留置場にいる僕。
その交点に向かって進んでいくストーリーである。
村上春樹の影響を受けているといわれているだけあり、そこかしこにその痕跡は見られる。
また舞城っぽさもそこかしこに。
しかし、青春ミステリを描く上で、一つの手法に近くなってしまっている事を考えれば、仕方の無い事とも。
登場人物の魅力は十分に描かれており、駅の伝言板やプールなどの小道具も生きている。
唯一、主人公が後半にとる行動に関しては納得の出来ない部分があり、多少の不自然を感じてしまう。
それを除けば及第点。
後はどれだけ独自性を出せるか。
青春ミステリとしての雰囲気作りは上手く出来ていたと思うので、今後に期待したい作家である。