中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

飯野文彦「黒い本」

奇作家・井之妖彦はある日、ぶらりと入った古書店のカウンターで一冊の本と出合う。黒い革の表紙、タイトルも何も記されていないその本には、店主による奇妙な但し書きだけが付いていた。“ご自由にお持ちください。但しいかなることがあろうとも、返本は不可。何が起ころうとも当店は一切責任を持ちません”―いわくありげな文句につられた井之は早速その本を持ち帰り、最初の一話を読みはじめるのだが…。次々と現れる奇怪な物語、万年筆による謎の書き込み、果たして「黒い本」の正体とは?ケータイ小説として連載され、話題騒然となった異色ホラーの怪作が文庫にて堂々完結。

(「BOOK」データベースより)

51点

 

怪奇作家・井之妖彦は、謎の古書店で"黒い本"に出会う。
短編はフランス綴じになっており、一話ずつ開いて読む必要がある。
一話読むごとに現れる奇怪な現象、あり得ない書き込み。
狂気の本が行き着く先はどこにあるのか。

 

基本は短編ホラー集だが、それを読者と共に読む"井之"の存在が肝となっている。
読者と同じ短編を読みながら、徐々に狂気の世界へと嵌っていく"井之"の姿を、否応無しに読者は自分と重ねることとなる。

 

仕掛けは面白いが基本は短編ホラー集。
面白いものもあれば、外れもある。
井之の要素は新鮮だが、後半にスピード感を失い、想像どうりの着地。
あえて短編の味として入れるのであれば、もう少し捻りがあっても良かったのではないか。

 

平山夢明が帯で絶賛していたので期待して購入したが、内容はそこそこと言ったところ。
期待値を煽る仕掛けが多いだけに、最終的な満足感は低くなってしまった。