中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

米澤穂信「犬はどこだ」

何か自営業を始めようと決めたとき、最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。そこで調査事務所を開いた。この事務所“紺屋S&R”が想定している業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。それなのに、開業した途端舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして―いったいこの事件の全体像は?犬捜し専門(希望)、二十五歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。『さよなら妖精』で賞賛を浴びた著者が新境地に挑んだ青春私立探偵小説。

(「BOOK」データベースより)

48点

 

米澤穂信らしい軽さと、少しビターなテイストが共存する本作。

作者のファン的には好みが分かれる所のようだ。

 

主人公は犬探しをメインとする探偵・紺屋。

そして、助手として転がり込むハンペー。

その二人がそれぞれの依頼を解決するため奔走する。

失踪した女性と古文書の解読。

一見関係のない二つの依頼が絶妙に絡み合っていく…。

 

今回の作品は個人的に米澤作品で好きなほうではない。

まず女性の失踪に関しての筋書きがあまりにも陳腐。

失踪理由、失踪先、目的。

全てが後付に感じてしまう内容で、女性のキャラクターにも一貫性がない。

 

また二つの依頼が交互に描かれる展開も、読者にだけ共通項が分かるポイントが生かせていない。

読者が探偵より先に真相へと進んでしまう事ができる手法なだけに、中途半端に使うのはどうかと。

スリードや演出的に意味を持たせて使うほうが良かったのでは。

 

歴史を絡めた部分の展開が冗長なこともテンポを悪くしている。

作中のどこまでがノンフィクションなのか分からないが、架空の土地の架空の歴史を紐解くことに面白みを見出せなかった。

 

シリーズ化しやすい布陣にキャラクターは配置されているが、今ひとつキャラクターに魅力を感じられなかった事も事実。

"古典部シリーズ""小市民シリーズ"のような次が読みたいワクワクは無い。

 

ラストに関しては賛否両論あるが、個人的には良かったと思う。

ちょっとブラックなテイストは作者の持ち味だと個人的には思っているので、さほどの衝撃を受けたわけではなく自然に受け止められた。