北村薫「玻璃の天」
昭和初期の帝都を舞台に、令嬢と女性運転手が不思議に挑むベッキーさんシリーズ第二弾。犬猿の仲の両家手打ちの場で起きた絵画消失の謎を解く「幻の橋」、手紙の暗号を手がかりに、失踪した友人を探す「想夫恋」、ステンドグラスの天窓から墜落した思想家の死の真相を探る「玻璃の天」の三篇を収録。
(「BOOK」データベースより)
72点
ベッキーさんシリーズの第二弾。
「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」と3本の短篇が収められている。
英子のキャラクターは、程よく成長が伺えて非常にリアリティがある。
ベッキーさんのキャラクターも相変わらず魅力的。
作品のトーンも前作から変わらず非常に上品な雰囲気で、昭和初期をかなりのリアリティで再現している。
しかし一点異なるのは、軍国主義批判を含む政治的な話が少し多くなってきたこと。
前作から年は過ぎ、少しづつ戦争の姿が見えてくる感覚は恐ろしい。
短編はいずれも一長一短がある出来。
ミステリとしては今ひとつと言わざるを得ないが、時代の描写やキャラクター、構成は流石に上手い。
前作があってこその本作だが、魅力の衰えは感じない。
寧ろ、聡明さに磨きがかかった英子の存在が物語をより大人向けに仕上げている。
ベッキーさんの秘密も垣間見える本作。
前作からの続きで是非読んでいただきたい。