山口雅也「生ける屍の死」
ニューイングランドの片田舎で死者が相次いで甦った。この怪現象の中、霊園経営者一族の上に殺人者の魔手が伸びる。死んだ筈の人間が生き還ってくる状況下で展開される殺人劇の必然性とは何なのか。自らも死者となったことを隠しつつ事件を追うパンク探偵グリンは、肉体が崩壊するまでに真相を手に入れることができるか。
(「BOOK」データベースより)
50点
久しぶりに長さを感じた小説。
1989年の「このミステリーがすごい!」で8位。
2008年に発表された「このミステリーがすごい!」ベスト・オブ・ベストでは2位。
この20年で評価が何故上がったのかが、この小説を読めば分かると思っていた。
しかし結果的には理由が見えないままに終わった感が強い。
主人公のグリンは葬儀屋を経営しているバーリイコーン家で生活をしている。
世界では死体が蘇る事件が多発している中、霊園内では不可解な事件が起こる。
この作品のミソは本格の様相を一切崩さない推理構成と、死体が蘇るという小説内の"事実"のマッチングである。
例えば、密室殺人。
その手口は既に過去の作家たちによって開拓され、既に干からびている。
しかし"死体が蘇る"という設定。
そして蘇った死体の特徴などを入れ込むことで、推理に必要な要素を構築しなおしている。
動機に関しても、死体が蘇る中で"人を殺す"という行為自体の意味から考え直さねばならない。
この手法は斬新であり、本格という枠内での挑戦としては非常に面白い。
しかし、唯でさえ従来の推理から頭を切り替えなくてはいけない本作。
外国の設定で読み解いていく作業はかなり骨が折れた。
確かにアメリカの葬儀の慣習やエンバーミング、火葬の考え方が無ければ成立しない味わいもある。
だが難解な設定と冗長さはいかんともしがたい。
本格好きにしてみれば「やられた!」と思う作品なのだろうが、自分には合わなかった。