恩田陸「ユージニア」
遠い夏、白い百日紅の記憶。死の使いは、静かに街を滅ぼした。知らなければならない。あの詩の意味を。あの夏のすべてを。
(「BOOK」データベースより)
31点
恩田作品らしい、過程を楽しむ小説。
しかし、その過程がいかにも冗長で面白みに欠けるのが残念。
過去、米寿の記念の日、町の名士宅で起こった十六人毒殺事件。
事件はとある若者の自殺で幕を閉じるが、 現在そこに違和感を感じた人たちが、あやふやな記憶を頼りに真相を追い求める。
そこには唯一の生存者である盲目の美少女の存在が。
三人称で語られる謎の少女。
その少女は悪なのか?善なのか?
比較的オーソドックスなスタイルで作られたこの小説。
推理小説としてまとめれば、かなり面白くなりそうな題材だが、恩田作品らしく推理小説としては成立しづらい描かれ方をしている。
謎の少女に関してのキャラクター付けがいまいちな事は、この小説に対してクリティカルな部分。
現実的なら現実的、非現実的なら非現実的。
潔い割りきりが無い部分が悪く出てしまったように感じた。
犯人は割りと早めに分かり、「何故」「どうやって」を追うのだがそこに関しても今ひとつすっきりはしない。
そのすっきりしない読後感をどう評価するかで、好みが分かれるところだと思う。
自分としては結末をこうするなら、もう少し過程の見せ方があったのではと感じてしまう。