中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

道尾秀介「背の眼」

「レエ、オグロアラダ、ロゴ…」ホラー作家の道尾が、旅先の白峠村の河原で耳にした無気味な声。その言葉の真の意味に気づいた道尾は東京に逃げ戻り、「霊現象探求所」を構える友人・真備のもとを訪れた。そこで見たのは、被写体の背中に二つの眼が写る4枚の心霊写真だった。しかも、すべてが白峠村周辺で撮影され、後に彼らは全員が自殺しているという。道尾は真相を求めて、真備と助手の北見とともに再び白峠村に向かうが…。未解決の児童連続失踪事件。自殺者の背中に現れた眼。白峠村に伝わる「天狗伝説」。血塗られた過去に根差した、悲愴な事件の真実とは?第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。

(「BOOK」データベースより)

48点

 

道尾秀介デビュー作にして、真備シリーズ第一作。

まだまだ若さが見える作風で、今の完成された作風からは遠い。

その分、作者の本質が見えてくる。

 

物語の主人公はホラー作家・道尾、霊現象探求所所長・真備、助手の凛の三人。

この三人の出会いとなった事件のお話。

自分は既に「花と流れ星」を読んでしまったので、彼らの(特に真備の)秘密については知ってしまっていた。

これは順番を間違えたな、と。

 

自殺者の背中に現れる謎の目。

子供たちの怪死と失踪。

子供の死体発見現場で聞こえる謎の声。

この三つの事柄を中心に、三人は推理を進めていく。

 

全体を読んで感じたことは纏まりの奇妙な良さ。

これが現在の道尾秀介を形作っていることは間違いないのだが、同世代のほかの作家に比べると冒険的・野心的・革新的と言った言葉から遠すぎる気がする。

特にデビュー作でこの纏まりは、素晴らしいという思いと幅の狭さを感じずにはいられない。

 

まず三人の関係性が非常にフォーマット的である。

フォーマット的に破天荒な真備を中心に、作者の投影でありワトソン役の道尾、美人助手の凛、とどこかで見たような安定感のある組み合わせ。

読みやすさと古さが同居しているように見える。

 

推理の方向性もホラー部分とミステリ部分が合わさった内容。

終盤にかけてのスピード感ある展開で、ホラー的な要素は非常に面白く見れたが、ミステリ要素は弱い。

犯人に関しても、中盤で見えてしまったし、謎の言葉も分かりやすく残された伏線から推理が出来てしまう。

お得意のミスリードも一部では見えるが(白い服の女や「ごめんなさい」という言葉への誘導など)、まだまだお家芸とは言えない。

亮平の家庭や学校の問題など投げっぱなしの部分も多く、今の道尾秀介のような完璧さは感じられない。

 

それでもホラーとミステリを同比重で扱う、真備の推理の方向性や、恐怖感のあおり方など見所は多い。

まだ読んでいない「骸の爪」では、色々な欠点が解消されていることを期待する。