桜庭一樹「赤×ピンク」
東京・六本木、廃校になった小学校で夜毎繰り広げられる非合法ガールファイト、集う奇妙な客たち、どこか壊れた、でも真摯で純な女の子たち。体の痛みを心の筋肉に変えて、どこよりも高く跳び、誰よりも速い拳を、何もかも粉砕する一撃を―彷徨のはて、都会の異空間に迷い込んだ3人の女性たち、そのサバイバルと成長と、恋を描いた、最も挑発的でロマンティックな青春小説。
(「BOOK」データベースより)
83点
桜庭一樹は凄い。
多彩であり、自分の強いポイントを良く分かっている。
彼女の強みは"女性の描写"、如いては"描写力"そのものだろう。
夜ごと六本木の廃校でガールズファイトを行う女性たち。
檻の中で戦う彼女たちは、何を求め、何に飢えているのか。
初期の作品と言われても、全くピンとこない。
それほど筆力が突出している。
まずキャラクター描写が素晴らしい。
"ガールズファイト""檻""コスプレ"。
そこに彼女たちが求めているものを見事に書き出している。
登場人物たちは女性だが、少女の時に欠落した何かを抱えている。
そこの書き方もくどくどしくなく、寧ろ爽やかすら感じる。
そして構成。
全三話からなる連作短編だが、各話には主人公がおり、その作品内での脇役が次の主人公を引き継ぐ。
その繋ぎの構成が絶妙。
同じ空間を前話の主人公視点で描いて終わり、次話の主人公視点で書いて始まる。
空間を共有し、特殊な環境下で仲間意識を持つはずのそれぞれの世界が、いかに異なるかを如実に描いている。
不思議な女性たちの成長の物語。
男でも共感できる確かな息遣いを感じることが出来る。