伊坂幸太郎 「チルドレン」
こういう奇跡もあるんじゃないか?
まっとうさの「力」は、まだ有効かもしれない。信じること、優しいこと、怒ること。それが報いられた瞬間の輝き。ばかばかしくて恰好よい、ファニーな「五つの奇跡」の物語。
吉川英治文学新人賞作家、会心の受賞第1作!
短編集のふりをした長編小説です。帯のどこかに“短編集”とあっても信じないでください。
伊坂幸太郎
(出版社/著者からの内容紹介)
47点
伊坂幸太郎の連作短編集。
伊坂節が炸裂している本作は、作者らしさが好きか嫌いかで評価が分かれる
イメージとしては「終末のフール」「死神の精度」に近い。
本作は「バンク」「チルドレン」「レトリーバー」「チルドレンⅡ」「イン」の五つの短編からなってはいるが、全てを通しての繋がりがある。
そういった意味でも非常に伊坂的だ。
その伊坂の作風にぴったりなご都合主義を引き起こす破天荒な男・陣内が話の根幹にいる。
どの話もそこそこに面白い。
ふわふわした人物描写と世界観はいつもと変わらず、ご都合主義な収束もいつも通り。
だが、今作は陣内という人物の面白さ、そいてそれに振り回される鴨居や武藤、盲目で知的な男・永瀬などの登場人物の魅力で上手く仕上げられている。
陣内の学生時代から家庭調査官となるまでを描いた物語は、破天荒ながら伊坂的な独自の倫理観が垣間見え面白い。
だが飛びぬけた印象が持てなかったのも事実。
それも伊坂的ではある。
相変わらず名台詞もあるし、心も温まる。
どれだけ感想を書いても、結局は彼の作風が好きかに評価は委ねられるとしか言えない。
そして自分としてはあまりにも同じ作風が多くて、たまには違う伊坂も読みたいと思っているので、好評価は付けづらい。
軽快で面白いし、欠点もこれと言っては見当たらない。
電車の中で軽く読む本としてはおすすめである。