中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

乙一、新津保建秀「GOTH モリノヨル」

―12月のある土曜日、森野夜は人気のない森に入っていく。そこは7年前に少女の死体が遺棄された現場だった。「死体をふりをして記念写真を撮る」つもりだった彼女は、誰もいないはずのそこで、ある男に出会う―。
Amazon内容紹介より)

Trial and Error

17点


「GOTH」のサイドストーリー的な物語と、森野夜をイメージした写真集が一冊になった本。
サイドストーリーは「GOTH」ファンなら嬉しい作品かもしれない。
少年と森野夜の新しい物語を読めるというだけで、それなりに価値はある。

 

作品は「GOTH」の中でも後半の雰囲気に近い。
少年がすでに超越した存在として書かれ始め、森野夜とのコンビがチグハグになっていてあまり好きではない。
物語のボリュームもかなり少ない。
殺人者も被害者を写真に収めたい願望から犯行を行うといった、後半の写真パートに引継ぐ為の存在に見える。
そもそも森野夜の"ありえない確率で殺人者に出会い、100%の確率で愛されてしまう"というキャラクターもいつから付いたのか良く分からない。

 

そして後半の写真パートだがなかなかに酷い。
映画版GOTHで森野夜を演じた高梨臨が被写体だが、正直イメージとはかなり離れていた。
"美しい"と文中で描かれ、それが存在意義にまで達しているキャラクターを映像化する事は非常に難しい。
昔、「富江」が映画化する際に、伊藤潤二がそんな事を言っていたのを思い出した。
森野夜もそれに近い存在で、非常に実写化の難しいモチーフだ。
栗山千明佐伯日菜子関めぐみなどが個人的にはイメージに近いのかなとも思うが、これは人それぞれ。

 

そして写真の内容がかなり悲惨。
ピンボケ、同カットの連写が続き、とても読めたものでは無い。
森野の神秘性や、殺人者が撮ったというリアリティ、殺人現場の雰囲気を出したかったのだろうがいくらなんでも酷い。
あくまで作品として販売するからには最低限のレベルがあると思う。
正直、新津保建秀のカメラマンとしてのモラルを疑ってしまう。

 

GOTHファンしか絶対に楽しめない一冊。
そしてファンでもガッカリするレベルと内容の薄さ。
おすすめは出来ない。