東野圭吾「カッコウの卵は誰のもの」
スキーの元日本代表・緋田には、同じくスキーヤーの娘・風美がいる。母親の智代は、風美が2歳になる前に自殺していた。緋田は、智代の遺品から流産の事実を知る。では、風美の出生は? そんななか、緋田父子の遺伝子についてスポーツ医学的研究の要請が……。さらに、風美の競技出場を妨害する脅迫状が届く。複雑にもつれた殺意……。超人気作家の意欲作!
(Amazon内容紹介より)
57点
東野圭吾の最新作。
自分と娘に血の繋がりが無いと疑う元オリンピックスキーヤーの父。
才能溢れる現役スキーヤーの娘。
そして遺伝子によるスポーツの才能を研究する男。
遺伝子で才能を認められ、父の為に自分の夢を諦める少年。
素晴らしいキャラクター設定で何故こうなってしまったのだろう。
カッコウという鳥の生態を知っていれば、タイトルからある程度の内容は想像がつく。
そして東野圭吾ならば、そのタイトルをミスリードに使用して結末へ結び付けていく。
そんな事を当然のように考えて読んでいた。
まずミステリとしてかなり納得がいかない。
犯人の動機がかなり不明瞭な上、犯行に及ぶ理由には思えない。
どんでん返しというより、唐突に都合よく物語を収束させたイメージ。
またタイトルの使い方も東野圭吾とは思えない荒さ。
出版するに当たり、タイトルを「フェイク」から変更したようだが、逆効果だったのではないか。
"カッコウの卵"というワードを後半まで溜めたわりに、出し所が陳腐だった。
柚木が選手たちに嫌われている理由も見えなかったし、犯人以外の行動も不自然。
本当に最近の東野圭吾の作品?と疑いたくなるレベル。
ただ過去の彼の作品を含め色々読めば、同じパターンで失敗している事は意外に多い。
細かいところを置いておけば、話はわかりやすくサクサク読める。
複数の親子の感情を、対比させるよう描いているのも面白い。
少年の競技をアルペンでなくクロスカントリーにした設定も効果的。
だが東野圭吾の作品と思って読むと、決して良作とは言えない。
そして新しい事にチャレンジしている訳でも無い。
守りに入って失敗しているという、一番悪いパターンに思えた。