東野圭吾「仮面山荘殺人事件」
八人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡を断たれた八人は脱出を試みるが、ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まる中、ついに一人が殺される。だが状況から考えて、犯人は強盗たちではありえなかった。七人の男女は互いに疑心暗鬼にかられ、パニックに陥っていった…。
50点
まず、東野圭吾の作品は上手い。
何をもってして上手いというかは各々あると思うが、「読みやすさ」に関しては突出していると感じる。
しかも読みやすいからといって浅くない。
それが東野圭吾の魅力だと思う。
今作を読んでまず感じたのは、キャラクターの上手さ。
それは「凝っている」などといったことではなく、文章内の所作を用いて、短時間に各人物をイメージ付ける上手さだ。
今作には10人近くの登場人物がいるが、登場からすぐに各人物のイメージを認識することが出来た。
小説家によってはキャラクターの識別に終始しながら読まなくてはいけない作品があることも考えると、この才能はすばらしいと思う。
特に今作のようなクローズド・サークルものでは最も必要な才能だと感じる。
という前置きがあって、今作の評価だが…なんとも評価しがたい難しい作品ではある。
人物を深堀するタイプの小説ではないので、単純に推理小説として楽しむべき本作だが、正直な話早い段階でオチに気がついてしまった。
なので、スラスラ読めて読後感も悪くないが、推理小説としてどうなのかとは思う。
またそのオチも今ひとつ納得がいかない。
それぞれのキャラクターの思惑があったとしても、いくらなんでも飛躍しすぎに感じた。
飛躍しすぎてもそれが功を奏している作品はいくつもあるので、オチ自体の問題というより、そこにつなげていく伏線や人物描写の問題だと思う。
そういう意味では東野圭吾の魅力を「可」。
推理小説として「不可」となり。
結局、「可もなく不可もなく」という結論に落ち着いてしまわざるを得ない。