中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

石田衣良「少年計数機 池袋ウエストゲートパークⅡ」

自分が誰なのか確認するために、まわりのすべてを数え続ける少年・ヒロキ。その笑顔は十歳にして一切の他者を拒絶していた!マコトは複雑に絡んだ誘拐事件に巻きこまれていくが…。池袋の街を疾走する若く、鋭く、危険な青春。爽快なリズム感あふれる新世代ストリートミステリー、絶好調第2弾。
(「BOOK」データベースより)
Trial and Error

54点


実は一巻を読んでいない。
で、二巻から読み始めたのは結構前の話。
その前にドラマを見てしまい、書評するには情報過多で難しくなってしまったので、しばらく置いておいた。

毎回同じく短編が続く。
物語のトーンも主人公・誠の一人語りで進む流れも基本的には統一されている。
というか、何冊も読むとさすがに飽きる。
だがその中でも珠玉(とは言いすぎだが)の短編は何作か隠れている。
この中に載っている「銀十字」もそんな作品。
ちなみに他の作品も面白いのだが、映像化された作品は先に見てしまっていたので、どうも素直に楽しめなかった。
筋を知っているというのは、人を退屈にするものである。

銀十字は老人ホームのアイドルを襲った引ったくりを捕まえるべく立ち上がった二人の老人に、誠が協力する話。
犯人の手がかりが、そのとき付けていた銀十字のブレスレットなのだ。
老人の奮闘は気持ちがいいものがあり、某ネタバレ不可小説に通じるものがある。
また社会的弱者の戦いが多く書かれるこのシリーズに共通した小気味よさを感じた。
オチもなかなか気持ちがいい。

ただ全体を通して過剰に若者・弱者などによった作風が気になる。
シリーズ全体を通してこのトーンなので、飽きが来るのも早い。

また誠のキャラクターもテレビを見た後だと違和感がある。
妙に斜に構えて、クラシックを好むキャラクターより、テレビでの馬鹿で熱血漢という設定のほうが共感できる。
小説よりテレビのほうが面白い、特にキャラクターが、というのは珍しい。
テレビでは石田衣良の妙に説教がましく、「若者は実はこうなんだぞ!」風がなくエンターテインメントとして突出させている。
それが逆に風刺的な面をより嫌味なく際立たせているので、作者的にも立つ瀬が無いだろう。
とはいっても、小説が一人称語の方法を取っているので、あまり馬鹿の設定は出来ないというジレンマも理解できる。
乙一「The Book」でも康一が妙に知的になっていたが、それは避けられないのだろう。ましてや億安を主人公に…とはいかないのは良く分かる。
それを考慮してもマンガのノベライズならともかく、小説ありきでドラマ化してキャラクター負けは若干お粗末に感じる。