垣根涼介「午前三時のルースター」
旅行代理店に勤務する長瀬は、得意先の中西社長に孫の慎一郎のベトナム行きに付き添ってほしいという依頼を受ける。慎一郎の本当の目的は、家族に内緒で、失踪した父親の消息を尋ねることだった。現地の娼婦・メイや運転手・ビエンと共に父親を探す一行を何者かが妨害する…最後に辿りついた切ない真実とは。サントリーミステリー大賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
74点
疾走間、主人公たちのキャラクターは文句なし。
長さもワイルドソウルより纏まっていて読みやすい。
ただその分ご都合主義的な所や伏線の露骨さが目立ってしまった。
また黒幕の動機も弱く感じた。
少年が父親を探す旅に付き合う主人公の長瀬。
なぜか付いてきた友人。
娼婦兼ガイド、運転手と主人公グループは個性豊かで、懐かしさすら感じるほど。
それぞれが抱えた物語も描かれており、その辺は流石だなと。
主人公が狂言回しになってしまう事もそれほど違和感を感じなかった。
またワイルドソウルでも感じたが、アジアや熱帯の色気のある熱気を描くのが筆者はやたら上手い。
旅行代理店勤務の経験が活きているのであろう。
個人的にはワイルドソウルより楽しめた。
物語としてはワイルドソウルの方が何倍も練られており、完成度は圧倒的に高い。
だが地の文章の密度が濃い作者なので、この本くらいの量がちょうどいい気はする。