東野圭吾「白夜行」
悪の吹きだまりを生きてきた男。理知的な顔だちの裏に、もう一つの顔を持つ女。偽りの昼を生きた二人の人生を、“質屋殺し”を追う老刑事の執念に絡めて描く。ミステリーの枠を広げた一大叙事詩。
(出版社/著者からの内容紹介)
91点
さすがに面白い。
何度読んでも唸らされる。
ノワールの名作である事は間違いないだろう。
物語は亮二、雪穂という2人の子供が成長する間、19年間を追った叙事詩である。
全13章にも及ぶストーリーは非常に長い。
だが全く飽きが来ないまま読み続けられる。
話の中では数多くの事件が起こる。
そして随時、種明かしがされていく。
その種明かしの方法も非常に上手く、探偵の語りなどでは進められず、細かいヒトコマから読み解かせる。
亮二のミステリーが雪穂側で明かされたり、緻密に計算された小説なことがうかがえる。
白夜行が好きでない人の意見には「主人公二人の主観が無い」という内容も多い。
だがこの壮大なストーリーを主人公の心理描写を中心に描けば、途端に陳腐な話になってしまうと思う。
二人の間のことは事実関係から読み解いていくしかないという姿勢は、物語中のヒントの多さを考えれば決して不親切とはいえない気がする。
そして特に雪穂の心理に関してはそれぞれの捉え方があっていいかと。
また第三者視点の入れ方も個人的には非常に上手いと感じる。
主人公たちが何のため、何をしたのか。
それを読者に読み解かせ、物語のつながりに気づかせるという意味でも、絶妙の按配で描かれている。
二人の人間関係や心理などを読み解く話としても絶妙だが、犯罪小説として純粋に楽しむことも出来る傑作。