歌野晶午「女王様と私」
真藤数馬は冴えないオタクだ。無職でもちろん独身。でも「引きこもり」ってやつじゃない。週1でビデオ屋にも行くし、秋葉原にも月1で出かけてるし。今日も可愛い妹と楽しいデートの予定だったんだ。あの「女王様」に出逢うまでは。彼女との出逢いが、めくるめく悪夢への第一歩だった…。「このミステリーがすごい!」1位。「本格ミステリ・ベスト10」1位。日本推理作家協会賞受賞。本格ミステリ大賞受賞。四冠制覇の歌野が贈る、未曽有の衝撃。
52点
これは評価の難しい小説だ。
ミステリーとしては信じがたいぐらい卑怯(アンフェア)なことを突き詰めてみたらどうなるか?
中途半端にやるとオチが酷いで終わる話だが、やりきったところに妙な読後の清清しさがある。
主人公は引きこもりのオタク。
そしてロリコン。
その彼と「女王様」が出会い、話は進んでいく。
随所に細かい叙述トリックが入っていたり、色々な部分がこっている。
そしてキャラクターもなかなかに絶妙。
最後のオチから逆算で考えると妙に納得のいく人物像が多い。
ただオチがあるにせよ、ミステリーとしての納得のいく結末はほしかったと思う。
それが無い時点で、これはミステリーを放棄している。
ミステリーとして不完全な事も含め、この小説の意図であるとは思うし、良さでもあるという矛盾した思いはあるが。
個人的にはこれは短編向きの話ではなかったかなと思う。
3/4までミステリーで進んだ為、どうしてもミステリー側の納得を求めてしまうからだ。
1/2までミステリー、そしてこのオチの方向で1/2位がバランスがいいのではないかなと思う。
このような破天荒な事を書いても、飽きずに読ませる筆者の才能には敬意を払いたい。