真梨幸子「孤虫症」
全身に紫色の瘤が出来、死亡する奇病が発生。失踪した主婦の行方は?メフィスト賞受賞のホラーミステリー。
(「BOOK」データベースより)
65点
とにかく暗く、そしてグロテスク。
それは寄生虫による症例だけでなく、人間関係も含めて。
しかしきわめて丁寧に、そしてミステリ的に描いた秀作でもある。
アパートの一室で性を貪る女。
そしてその相手には奇妙な症状が現れ死亡していく。
女の住むマンションの奇妙な人間関係、そして失踪する女。
妹と夫、そして過去。
全てが絡み合うサスペンスホラー。
なかなかの力作である。
特にマンションを取り巻く人間関係の何ともいえぬ不気味さは見事。
ミステリ的に最後へと盛り上げていく手法も非常に面白い。
ただ、最大の難点として、犯人側視点での会話で全てが明らかになり、矛盾を説明していく下りでの種明かしには興ざめした。
それをやってしまえばまぁ簡単に伏線回収や矛盾の除去は出来るのだが…なしだろうと思う部分も。
また急にマンションの立っていた場所の過去の話になり、伝承的な要素が出てくるのも今ひとつ。
要素が混濁して、精度が下がったようにも感じた。