薬丸岳「天使のナイフ」
殺してやりたかった。でも殺したのは俺じゃない。妻を惨殺した少年たちが死んでいく。これは天罰か、誰かが仕組んだ罠なのか。「裁かれなかった真実」と必死に向き合う男を描いた感動作!第51回江戸川乱歩賞受賞作。
77点
テーマは少年犯罪、そして被害者、加害者について。
それをどの立場に肩入れすることなくミステリーに取り入れている。
主人公はカフェ店オーナーの桧山貴志。
彼は生後五ヶ月の娘の前で妻・祥子を惨殺された過去を持つ。
殺したのは十三歳の少年三人で刑事罰を受けないことに憤り、過激な発言でマスコミとの確執も起こした。
そして現在、突然加害者の少年が殺される。
疑われる桧山は必死に犯人を追い、そして恐ろしい真相に向かっていく。
というのがあらすじ。
ミステリー部分は、妻の過去、意外な人物の浮上、伏線の回収など含めかなり面白い。
犯人発覚のあたりに関してはネタバレになるので多くは語れないが、エピローグ的部分の上手さが、その前の展開の強引さをある程度消している。
主人公を含め、少年犯罪の考え方が違う人間が多く出てくる。
ただその考え方が押し付けがましくないので、嫌らしさを感じないで読める。
新人としては筆力もなかなかのものだと感じた。