遠藤徹「姉飼」
蚊吸豚による、村の繁栄を祝う脂祭りの夜、小学生だった僕は縁日で初めて「姉」を見る。姉はからだを串刺しにされ、伸び放題の髪と爪を振り回しながら凶暴にうめき叫んでいた。第10回日本ホラー小説大賞受賞作他全4編収録。
29点
脂祭なる奇祭の縁日で売られている「姉」。
「姉」は串刺しにされて売られており、近づきすぎる客には食いつこうとする。
そんな「姉」に魅せられた主人公のお話。
表題作に関しては、まず設定が凄まじい。
なぞのフリークス的存在な「姉」。
蚊を餌にするため、池に大量のボウフラを養殖しないと飼育できない「蚊吸豚」。
担いでいると脂がとけて、担ぎ手は脂に埋もれていく事になる「脂神輿」。
設定は凄まじいのだが、それに終始して、肝心の主人公の転落していく人生が薄っぺらい。
また設定押しなので後半はどうしても飽きてしまう。
他の短編は三作揃っていま一つ。
この作者はディテールに懲りすぎて、本筋が疎かになる傾向がある。
それはホラー作家としては致命的な事である。