中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

平山夢明「ミサイルマン」

『独白するユニバーサル横メルカトル』の衝撃と興奮、よみがえる!日本推理作家協会賞受賞。「このミステリーがすごい!」1位。2006年の読書界を席巻した異形のマエストロ・平山夢明、再臨。凄まじくも美しく屹立する、壮絶な文学的冒険の成果を見よ。
(「BOOK」データベースより)
$Trial and Error

77点


帯には中原昌也が「病的に乾いた笑いと、破けた糞袋……現代最狂ハードボイルド作家の放つ異臭を嗅げ!」と強烈なセリフを添えている。
確かに凄まじい作品が列挙している。
しかし、今回の平山夢明の作品は幅広く、多少の希望を持たせる作品も入っている。

某サイトより説明をお借りすると、「収録作は、ニセモノ昭和テイストから滲み出す日常の歪みから、異世界のシステムが明らかにされるビルドゥング・ロマンスの序章「テロルの創世」、顔崩れの醜男、吸血女、モジモジデブの暗黒三角形「Necksucker Blues」、狼人の因果と血の宿命の物語「けだもの」インテリ快樂殺人者の因果な宿命が凄まじい幕引きへと突き進む傑作「枷」、ダメ男の壮絶な戀物語が絶望の中の希望へと昇華される「それでもおまえは俺のハニー」、因果屋敷に越してきたタクシー運転手の悪夢「或る彼岸の接近」、殺人ロードを突き進むキ印二人の因果地獄「ミサイルマン」の全七編。」という身もふたも無い内容。(いい意味で)

この作品集の中でも飛びぬけて傑作なのが「枷」である。

殺人という非日常の行為をする事でおこる奇跡。
それは曲がった食器や色々な形で現れ、男はそれの虜になる。
だが殺人衝動を抑える為に作った「枷」が、最悪の結末へと加速させていく。

平山夢明初心者には「メルカトル→ミサイルマン→他人事」の順を押すが、ホラー小説経験者には「ミサイルマン→メルカトル→他人事」という流れをお勧めする。
ただ個人的には短編全体のクオリティの高さで「他人事」が一歩抜きん出ていると感じる。