中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

山田正紀「ミステリ・オペラ―宿命城殺人事件」

平成元年、東京。編集者の萩原祐介はビルの屋上から投身、しばらく空中を浮遊してから墜落死した。昭和13年満州。奉納オペラ『魔笛』を撮影すべく“宿命城”へ向かう善知鳥良一ら一団は、行く先々で“探偵小説”もどきの奇怪な殺人事件に遭遇する。そして50年を隔てた時空を祐介の妻・桐子は亡き夫を求めて行き来する…執筆3年、本格推理のあらゆるガジェットを投入した壮大な構想の全体ミステリ。

(「BOOK」データベースより)

49点

 

濃厚な歴史小説であり、探偵小説。

昭和という舞台を使い、50年の時を経た二つの空間で起こる事件を書いた大作。

 

平成元年、萩原祐介がビルの屋上から投身自殺をした。

その妻・桐子は無き夫が死んだ理由を求めていくうちに、昭和13年満州を舞台に書かれた"宿命城殺人事件"に出会う。

 

平成元年の事件を背後にした桐子の独白と、昭和十三年の事件を書いた手記という形で語られる事件が交互に絡まる。

その複雑でありながら見事なプロット構成は凄まじい。

また数多くの謎が提示され、どの謎も非常に魅力的なもの。

浮遊する自殺者、消えた車両、見立てられた連続殺人、検閲図書館。

南京での軍事行動や歴史観を問う語り口、オペラ・魔笛などの舞台装置も素晴らしい。

 

しかし、後半に入り謎自体の収集が非常にコンパクトであっけない事に不満を抱かざるを得ない。

偶発的な内容の多さやトリック自体の不明瞭さが目立ちすぎると感じた。

歴史をまたがる構成や、悲恋の下りなど、冗長さを感じさせない魅力があるだけに非常に惜しい。

 

広げすぎた風呂敷の魅力は素晴らしいが、完全に畳み損ねた印象。

これだけの長さの小説であれば、終わりの重要さは増すだけに残念である。