森博嗣「クレィドゥ・ザ・スカイ」
ここにあるのは、空気、二機の飛行機。そして、見つめ合う目だ。
(「BOOK」データベースより)
73点
この作品でスカイクロラとここまでの作品が繋がる。
普通に考えれば全ての伏線を回収し終わり。
しかしそうは行かないのがこの作品。
この作品があることで、色々矛盾無く理解し始めていたキルドレについてや世界についてが分からなくなってしまう。
そんな謎の多い作品なのだ。
まず一番大きな謎は、この主人公は誰なのか?という問題だ。
いままでの作品でも序盤は誰が主人公か分からないという手法を多用してきた。
それもあり中盤までは誰が主人公か分からない事にも違和感は無かったし、正直クリタだと思って話を読み進めた。
しかし終盤になっても主人公は明かされず、クリタと考えると矛盾する事実も多く出てくる。
個人的にはこの作品の主人公は草薙水素だったと思っている。
そして残された謎に関してはキルドレの明かされていない特性によるものなのかとも思う。
カンナミが見た夢と、サガラアオイとの関係。
フーコがクリタに接するように接した近作の主人公の謎。
作者は最後に大きな難問を残していった。
そしてそのやり方が非常に見事であり、いやな感じを受けるものではなかった。
もう一度シリーズ全てを読み返したくなる本作。
シリーズとして珠玉、そしてそれぞれも珠玉の一冊である。