森博嗣「ダウン・ツ・ヘヴン」
真っ黒な澄んだ瞳。その中に、空がある。そこへ堕ちていけるような。前作『ナ・バ・テア』に続き、戦いを生きる子供たちを描く。
(「BOOK」データベースより)
72点
草薙視点で描かれるストーリー。
彼女の戦闘機乗りとしての中期になるのだろうか。
前作から時間は進み、草薙のポジションはただの戦闘気乗りで許されなくなりつつある。
会社の上層部の人間とのかかわり、マスコミへの露出。
いろいろな事を通して、彼女の純粋な空への思いはゆっくりと踏みにじられていく。
この話では世界観に対して少しずつ明らかになっていく。
戦争を望む世界による作られた戦争が世界の本質。
その世界のヒーローである草薙水素。
彼女の資質が皮肉にも彼女が望まない世界へのかかわりを増やしていく。
そしてラストでの決定的な裏切りが彼女にもたらした影響はどれほどだったのか。
薄い記憶、そして感情の薄いキルドレの文体の中にも読み取れる彼女の苛立ち。
透明感はありつつも、物語として急展開を感じさせる作品。