久しぶりに開かれる大学の同窓会。成城の高級ペンションに七人の旧友が集まった。(あそこなら完璧な密室をつくることができる―)当日、伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。何かの事故か?部屋の外で安否を気遣う友人たち。自殺説さえ浮上し、犯行は計画通り成功したかにみえた。しかし、参加者のひとり碓氷優佳だけは疑問を抱く。緻密な偽装工作の齟齬をひとつひとつ解いていく優佳。開かない扉を前に、ふたりの息詰まる頭脳戦が始まった…。
(「BOOK」データベースより)
72点
いくつかの欠点はあったものの非情に面白い作品だった。
石持浅海という作家の作品を読んだのは初めてだったが、他の作品も読みたくなる内容。
成城の高級ペンションに集まった同窓生達。
そこで伏見は後輩新山を殺害する。
事故に見せかけるため密室を作る伏見亮輔。
当然状況が分からない他の同窓生をよそに、碓井優佳は少しずつ開かれない扉に疑問を持ち始める。
まず事件の詳細が犯人の視点で冒頭に語られる。
そしてそこからも犯人の視点で物事が進んでいき、探偵役である有佳との頭脳戦が始まる。
まず殺人現場の扉が開かれず、被害者は前日の疲れから寝ていると考える同窓生に対し、優佳が疑問を持ち始める流れが非常に面白い。
殺人現場が見えないまま推理する優佳と、言論誘導する事で推理を防ごうとする伏見。
この攻防は見ていて新しさを感じた。
またちょっとした恋愛要素のはさみ方も見事。
知的で似たもの同士と評される伏見と優佳。
しかしそこに隔たる大きな違いを当人同士は感じ取っている。
冷たい女と自らを評する優佳の魅力も良く描けている。
難点は頭が良く完璧な犯人役である伏見が、犯行時に犯したミスが多すぎる事。
想像し得なかったミスはともかく、二つほど考えが及ばなくては不自然なミスがあった。
また物語の重要な部分である"何故新山を殺したのか?"の説明があまりにも飛びすぎてしまった部分。
殺人の結構理由としてはあまりにもな気すらする。
それを差し引けない人はこの小説を酷評するだろう。
またラストに対しても好みが分かれるところ。
個人的には物語の構成力や丁寧な描写に魅力を感じたので、帳消しにしてもいいかなと思う。
蛇足だが、部屋割りの際にそれぞれがどの部屋になるかに、きちんとエピソードをつける心遣いは非情に好感が持てた。
無作為な部屋割りを無理して覚えるのは、推理小説ではよくある事ながら、改良の余地を感じているので。