中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

貴志祐介「硝子のハンマー」

日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、有人のフロア。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。青砥純子は、弁護を担当することになった久永の無実を信じ、密室の謎を解くべく、防犯コンサルタント榎本径の許を訪れるが―。

(「BOOK」データベースより)

65点

 

貴志祐介の本格推理物。

 

不可能に見える密室殺人。

その謎を解くべく、弁護士の青砥は防犯コンサルタント榎本の元を訪れる。

侵入者視点で進入路に対して試行錯誤を繰り返す二人。

そしてある結論にたどり着く。

 

前半は榎本が中心の謎解きパート。

相変わらずの緻密な調査に基づく描写は凄まじい。

特に今回は防犯という視点で、防犯カメラや鍵、暗証番号の抜け道などが緻密に描写される。

榎本のキャラクターは面白く、プロフェッショナルな防犯コンサルタントとして、凄まじい知識と推理力が披露される。

その反面、青砥の描写には今ひとつ魅力を感じなかった。

 

後半はお得意のノワールもの。

榎本の達した推理までの道筋が犯人目線で描かれる。

 

構成や描写は非情に面白く、魅力的な作品。

その分、二つの話が重なる中心のトリックがいまいちだった事がマイナス。

緻密な描写の裏をかくトリックなので、なかなか派手にはいかないだろうが、今ひとつ地味な印象を受けた。