中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

東野圭吾「使命と魂のリミット」

心臓外科医を目指す夕紀は、誰にも言えないある目的を胸に秘めていた。その目的を果たすべき日に、手術室を前代未聞の危機が襲う。心の限界に挑む医学サスペンス。
(「BOOK」データベースより)
Trial and Error

51点


東野圭吾に対するハードルは高い。


この作品もタイムリミット系のサスペンスとしては上質。
緊迫感の出し方など絶妙。

主人公は父の術中死に疑問を持ち、それを調べる為医者となり、当時の執刀医・西園の元で勤務する。
そして母と西園の関係、当時の手術にミスは無かったのかを調査していく。
これが一つ目の軸。

病院に対して医療事故を発表せよと迫る謎の脅迫者。
これがもう一つの軸。

二つの軸が重なるとき、全ての謎が解け、緊迫したタイムリミットが発生する。
そこで描かれるのは「使命」。
これがこの小説のテーマであり、「プロフェッショナリズム」に近い形で表現される。
「使命」という問題に真正面から取り組んで、それを読者に考えさせられる筆力はさすが。

一点、問題点をあげるなら、軸の謎が解けてた後でも、行動に納得のいかない理由がいくつか存在すること。
これは東野圭吾にはありがちな問題点。
ミステリーなら目をつぶれるが(トリック重視での強引さは理解できる)、サスペンス・ヒューマン系のジャンルでは少し気になる。

小説全体の出来としてはなかなかだと思うが、東野圭吾だと考えると傑作とは言えない。