中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

「カーゴ/CARGO」

恐ろしい感染症により荒廃したオーストラリアで、幼い愛娘を守るべく見渡す限りの荒野を懸命に歩き続ける男。だが、彼の体もまたウイルスにむしばまれていた…。

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58点

話題になったショートフィルムの長編化って不安しかないですよねw

でも、ゾンビもの好きですし、マーティン・フリーマン好きですし、淡い期待を持って見てみました。

 

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このcargoのショートフィルムって凄く良く出来てるんですよね。無駄な要素が無く、最後にタイトルのcargoの意味がわかるという。冒頭からして、状況説明に無駄がないですし。それを長編にするのは正直かなり無理があったと思いますが、引き伸ばし方としては・・・まずまず良くやった方かと思います。

 

この話はゾンビ化が48時間後に迫った父親が、赤ちゃんの娘を助けるために安全な場所を探すというシンプルなストーリー。 
まず前半は母親の感染から死。父親の感染が描かれます。そして旅をしながら、病に侵された教師や残酷なサディスト、アボリジニの少女、別の家族と様々な人間と出会って行きます。 


ロードムービー的な作りにしたのは正解だと思います。出会う人も魅力がある人ばかりですし、ディストピア的な世界観とオーストラリアの赤土ばかりのだだっ広い風景もマッチしていて、旅する親子の画に力を与えていたかと。

カメラワークや人物描写にかなりセンスを感じますし、いい監督なんだと思います。次回作も期待できます!

…でもやっぱり無理があったんじゃないですかね、長編化は

 
まず、父親がゾンビになるまでの経緯が足されていますが、別に悪くは無いんですが冗長さは否めなかったかなと。ゾンビになった母親を見捨てられずに噛まれてゾンビ化…赤ちゃんがいるのに無責任過ぎませんか…?まぁそれも人間くささなのかもしれないですが。 


ゾンビになるまでの時間も3時間から48時間に伸ばされています。この延長が緊張感を奪いますよね。なんとか安住の地をって探していた短編に比べ、「ここでもいいけど、ちょっとなー」という余裕が生まれています。贅沢か!w 


途中からアボリジニの少女も旅に加わります。その上でギリギリまでいい場所を探します。サディストの男に襲撃され少女はまぁまぁ怪我。父親に残された時間ももう無い。そこで肉と棒でゾンビ化した自身を歩かせ、少女と赤ん坊を安住の地に運びました…って。時間管理甘過ぎません??

 

アボリジニの少女と会ってから、ゾンビを狩る白塗りのアボリジニの集団の映像がちょくちょく挟まるのですが、cargoとなって向かった先はその謎のアボリジニの集団。

少女は仲間と会えて感動!なんですが、やっぱり赤ちゃんを救う苦肉の策としてのcargoと、知り合いのまぁまぁ怪我してる少女と赤ちゃんを救うためのcargoって違いますよね。お前も乗るんかい!というか。

このオチって、それ以外どうしようも無い中で考えているからこそ、残酷さもありながら美しいオチなんですよね。 少女がアボリジニの集団に会ってハグってなると、元気だったのに友人とまで呼んだ相手を乗り物にしたのかよ・・・という印象になってしまいます。

 

そしてアボリジニの集団には帰るコミューンがあり、カウボーイハットの白人のオッさんがいたりする人種の垣根を越えたコミューンで安心ですね!という終わり方。都合が良すぎますし、カウボーイハットのオッさんという分かりやすい多様性がちょっと露骨過ぎる感じもしました。

オーストラリアの先住民と白人って要素はかなり複雑だと思うんです。いくらなんでも安住の場所を探す親子のロードムービーに、この要素は余計だったかなとも思います。 


ゾンビになるときに蜜蝋が出る感じとか、出会った女教師がスキンヘッドで、抗がん剤の影響かなと思わせるシーン。サディストの書き方にも優しい視点があったり、ゾンビ化した父親を殺す前に母親の香水を嗅がせてあげるシーンが凄く美しかったりと、いいところもかなりある映画です。

センスを感じる監督なだけに無理な長編化は避けて欲しかったですね。次回作に期待です。