綾辻行人「Another」
その「呪い」は26年前、ある「善意」から生まれた―。1998年、春。夜見山北中学に転校してきた榊原恒一(15歳)は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、いっそう謎は深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木ゆかりが凄惨な死を遂げた!この“世界”ではいったい、何が起こっているのか?秘密を探るべく動きはじめた恒一を、さらなる謎と恐怖が待ち受ける…。
(「BOOK」データベースより)
82点
綾辻作品の新境地と言わしめるのは伊達ではない。
非情に面白く読めた秀作。
とある中学校、とあるクラスにだけある"呪い"。
そこに転校してきた主人公・ 恒一。
クラスの皆からいないものとして扱われる謎の少女・鳴。
呪いは被害者を生みながら、"何故?""どうやって?""誰?"と話は進展していく。
話はホラーというジャンルだが、特定状況下のミステリとしても考えられる。
呪いのクラスで行われる鳴に対する謎の扱いから始まり、呪いを終わらせる方法、そして"もう一人"は誰なのか?
分厚い小説だが、それを感じさせないスピード感で物語へとグイグイ引きこんでくる。
ヒントは意外と各所にちりばめられ、勘のいいかたならすぐに違和感に気づいてしまう可能性もある。
そういった意味では犯人探しに対してのバランスはちょうどいい。
また学校・呪いといった使い古されたテーマなのに、綾辻の手にかかるとここまで面白くなるのかという、驚きもあった。
超常現象に対しては"あるもの"として、その現象の不安定さをもってして超常現象とするスタイルは個人的には好み。
そうする事で早いうちから、今年の呪いの終わらせ方にフォーカスしていき、話にブレが無い。
好みの分かれるトリック手法に関しては、賛否両論あると思うが、この設定で読ませた手腕は凄まじい。
このテイストのものを是非また書いて欲しいと思いたくなる一冊。