中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

佐々木譲「制服捜査」

警察官人生二十五年。不祥事をめぐる玉突き人事のあおりで、強行犯係の捜査員から一転、単身赴任の駐在勤務となった巡査部長の川久保。「犯罪発生率、管内最低」の健全な町で、川久保が目撃した荒廃の兆し、些細な出来事。嗅ぎつけた“過去の腐臭”とは…。捜査の第一線に加われない駐在警官の刑事魂が、よそ者を嫌う町の犯罪を暴いていく、本物の警察小説。
(「BOOK」データベースより)

72点

 

健全な町の腐敗を描いた警察小説。

全五編からなる連作短編集である。

 

駐在勤務として平和な町にやってきた川久保。

しかしその町では色々なところにヒズミが生まれ、様々な事件が起こっていた。

 

どのストーリーもシンプルながら味のある仕上がり。

クオリティも安定していて読み応えがある。

 

やはり全体を通して非常によかったのは川久保のキャラクター。

駐在としての分をわきまえながら、独自の正義感を持ち、鋭い観察眼を持つ。

彼の魅力がこの小説の魅力となっていると言ってもいい。

 

町の腐敗についてもリアルに描かれている。

程度や人間関係含めて、実際にあるような社会構造がそこにある。

前科を持つ大城とのシーンや、緊迫感ある祭りでのシーンなど随所に見所もあり、飽きずに読むことが出来るだろう。

 

ただ「このミステリーがすごい!」国内編第2位の作品と思うと、多少ミステリー部分に弱さと強引さを感じてしまう。

一本調子な語り口も物語を平坦にしてしまっているようにも見える。

あからさまな欠点は無いが、最高とまではいかない小説といったところか。