中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

太朗想史郎「トギオ」

捨て子の「白」を拾ったがために、大きく狂いはじめる主人公の人生。家族は村八分に遭い、主人公はクラスメイトから生々しく陰湿ないじめを受ける。村を出た主人公は港町に流れ、やがて大都会・東暁(とうぎょう)を目指すことに。生き抜くために悪事に手を染め、殺伐とした東暁で地べたを這いつくばって生きる主人公が唯一気にかけていたのは、村に置いてきた白のことだった―。『このミステリーがすごい!』大賞第8回(2010年)大賞受賞作。

(「BOOK」データベースより)

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37点

 

このミス大賞受賞作。
かなり賛否両論ある作品。

捨て子の白を拾った事で狂い始める主人公の人生。
田舎の農村を抜け、バイオレンスを纏いながら、港町から東暁を目指す。
近未来か異世界か分からない世界を疾走する少年の物語。

選評にもあったが吉村萬壱の作風に近いものを感じるし、AKIRA的な世界観も面白い。
しかしあまりにもまとまりがない為、作者の描写したい事が伝わってこない部分がある。

世界観の説明は無いが、東暁を中心とした世界は日本をモチーフにした異世界風。
しかし国民国家は崩壊し、すさまじい貧富の差がうまれている。
そこで生きる少年の力は伝わってきたが、同じテイストで続く物語に後半は飽きがくる。


また行動の動機も全体的に不明瞭で、何故そんな行動に出るか分からないシーンが多い。
世界観が不明瞭なのはいいが、行動原理まで不明だと捉えどころが無い。
特に根幹である「白に固執する理由」が分からない。
その為、ラストの行動もあまりに唐突で陳腐にうつる。
政治的なメッセージも多いが、それも様々な物語の不整合から説教じみてしか読み取れない。

文章のパワーはある作家だと思うので、もう少しシンプルな作品を次は期待したい。