道尾秀介「月の恋人」
冷徹にビジネスを成功させる青年社長・葉月蓮介が、夜の上海で巡り合った女。ありえない二人の物語は、美貌の中国人モデルや、部下の社員らを巻き込み予測不能の展開に…。旬のエンターテインメント作家がフジテレビ月9ドラマのために書下ろした、話題沸騰の恋愛劇。
(「BOOK」データベースより)
25点
道尾秀介が月9の為に書き下ろした恋愛小説。
首元がくすぐったくなるくらいトレンディな作品。
家具会社レゴリスの社長・蓮介は上海進出のため、渡航していた。
そこで派遣会社を辞め上海に旅した女性・弥生と出会う。
また、素人をモデルとして起用するというレゴリスの戦略に伴い、起用された中国人モデル・シュウメイの登場もあり、恋愛模様は混沌としていく。
基本は恋愛中心ではなく、蓮介の成長物語だが、このあらすじがあまりにもありきたり。
お金に厳しく、情が薄いという絵に描いたような典型的なやり手の社長像。
その社長が派遣を辞めた弥生の感性に触れるうちに、幼いころの純粋さを取り戻す。
このメインの流れがあまりにも凡庸すぎるせいであまりにもしまりがなくなっている。
またミステリ要素も無いこの小説は、道尾ファンからすればスカスカの状態。
シュウメイの登場や行動もドラマを盛り上げるためのような行動が多く、一貫性が無いため感情移入できない。
サブキャラクターは弥生の転職先の社長や飲み屋の店員、弟などバラエティに富んでニヤリとしてしまう描写もあるが、キャラクター造形の薄さにも感じる。
色々と制約もあったと作者も書いているが、恋愛小説をミステリなしで描く道尾作品はまだ無理を感じた。
表現方法も平たいものが多く、感情を今ひとつ想起されない。