中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

桜庭一樹「少女には向かない職業」

あたし、大西葵13歳は、人をふたり殺した…あたしはもうだめ。ぜんぜんだめ。少女の魂は殺人に向かない。誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。だけどあの夏はたまたま、あたしの近くにいたのは、あいつだけだったから―。これは、ふたりの少女の凄絶な“闘い”の記録。『赤朽葉家の伝説』の俊英が、過酷な運命に翻弄される少女の姿を鮮烈に描いて話題を呼んだ傑作。

(「BOOK」データベースより)

52点

 

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」に良く似たフォーマットの作品。

少し大人びた目線を持つ主人公、不思議な友人との不思議な関係。

大人や世間への反抗、少女の持つ狂気とリアリティ。

結末を先に見せた後で、そこへの過程を追う手法など類似点は多い。

ただキャラクター造形やストーリーの魅力としては「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」に軍配が上がるかと。

 

女性なだけあって、少女の描写は凄まじく上手い。

リアリティを持たせる為の口語的な表現には好みが分かれると思うが。

 

またノワールとしてのストーリー展開は比較的凡庸。

結局友人の秘密が物語最大の謎となる位で、オチも含めてどこかで見た青春ノワールに見えてしまう。

 

だがこの比較的平凡なストーリーを、内面描写の上手さ、言葉選びの面白さで一つの作品として仕上げている所がこの作者の上手さでもある。

バトルアックスを抱えて巨大迷路に向かう葵の描写のシュールさなど、随所にその魅力は出ている。

 

ただミステリとしてはあくまでありがちな物語。

この小説を面白いと思えるかはミステリ部分ではない、中学生の日常のリアリティに面白みを感じれるかにかかっているだろう。