津原泰水「赤い竪琴」
三十歳を過ぎ、仕事への希望も見出せぬまま、東京で一人虚無的な日々を過ごすデザイナーの暁子は、祖母の遺品をきっかけに耿介という男と知り合う。命ある限りの残酷な愛の記録。真実の愛を知った大人の哀愁漂うラブストーリー。
28点
津原泰水の小説なので、恋愛小説だとは思わなかった。
そして、恋愛小説だと思わずに読む事は恐ろしく苦痛だ。
なにせ何も起こらないのだから。
30を過ぎ、漫然と日々を過ごすデザイナー・暁子。
彼女は祖母が残した"寒川玄児"という詩人の日記を、その孫である耿介に届けに行く。
そこから始まるほろ苦い大人のラブストーリー。
暁子のキャラクターは好感が持てるとは言いがたい。
だが女性の心理を良く描けており、リアリティという面では申し分ない。
耿介に惹かれていきながらも、心の中では変化を拒んでいる暁子。
そして天才肌でどこと無くつかめない性格の耿介。
二人の描写には恋の煌きや純粋な憧れは存在しない。
どこまでもリアルでビターなテイストが貫かれている。
要所要所の小さな出来事や描写は面白い所もあったが、個人的には冗長に感じた。
この小説の鍵は暁子に共感できるかどうか。
そういった意味で、男性作家が書いたにもかかわらず、かなり女性向けの作品と言える。
文章は津原泰水らしく非常に美しい。
寒川玄児の詩も、その世界観を上手く表現している。
読む人が読めば満点評価の作品であろう。
だが、自分は男性であり、ここまでビターな恋愛小説はどうにも飽きてしまう。
次の津原泰水は是非ホラーかミステリを読んでみたい。