中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

歌野晶午「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」

舞田歳三は浜倉中央署の刑事だ。仕事帰りに兄・理一の家によって、小学五年生になる姪のひとみの相手をし、ビールを飲むのを楽しみにしている。難事件の捜査の合間を縫ってひとみをかわいがる歳三だが、彼女のふとした言動が事件解決のヒントになったりもして…。多彩な作風で知られる歌野晶午が、ちょっと生意気でかわいらしい少女と、本格ミステリらしい難事件を巧みに描く。刑事×難事件×おしゃまな11歳=歌野晶午流「ゆるミス」。軽やかに登場。

(「BOOK」データベースより)
Trial and Error

56点

 

タイトルから"舞田ひとみ"の活躍を期待していた。

だが彼女の活躍はそれほどでもなく、基本的には警察小説の粋を出ていないと感じた。

 

全六編からなる短編集だが、連作といっていいだろう。

それぞれの短編には微妙なつながりがあり、各章で全てが明かされていくわけではない。

 

最終章までは概ね小気味いいテンポで話が進んでいく。

ただ推理部分のお粗末さは鼻につく。

今ひとつ納得できない推理や、やたら偶発的な出来事が発生する事件。

そしてひとみのふとした行動から、急に全貌が明らかになる流れなど不自然極まりない。

 

ただそれも含めて伏線に感じていたので、最終章にはかなり期待した。

犯罪発生率の急上昇・未解決の事件・家族の話などなど、他にも気になる伏線が多数あった。

しかし最終章でもその殆どがうやむやのままになってしまう。

いくつか回収された伏線でも、歌野晶午らしいどんでん返しはあるものの、納得感とは遠くとってつけた感は否めない。

 

やはり歌野晶午に期待するのは"何故気づけなかったんだ"という感情を想起させる絶妙などんでん返しで、意外性があれば何でもいいという訳ではない。

そして最後がいまいちでも納得できるほど、家族を描ききっている訳でもなく、ユーモアに溢れているわけでもない。

伊坂幸太郎ならこの辺りは上手く取りまわせるのだろう。

 

小説としての読みやすさや、キャラクター付けの上手さはあるが、全体を通して今ひとつ空振りに終わったような印象。

ラスト次第では名作になりえたと思うだけに残念だ。