中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

石田衣良「骨音 池袋ウエストゲートパークⅢ」

最凶のドラッグ、偽地域通貨、連続ホームレス襲撃…壊れゆくストリートを抜群の切れで駆け抜ける、新世代青春ミステリー。I/W/G/Pシリーズ第三弾。
(「BOOK」データベースより)
Trial and Error

44点


シリーズ全体のトーンはあまり変わらない。
相変わらず妙に社会的弱者よりで、説教くさい。
さらにこの作品で感じたのは「オッサン臭さ」。
レイブで歌姫というシチュエーションもどうかと思うし、ドラッグ「スネークバイト」、密売組織「ウロボロス」、バンド「デッドセインツ」とネーミングセンスも最悪。
あくまでエンタメ作品として読めば問題ないが、若者文化を知らないオッサンが書いた本という匂いが鼻についてしまうとキツイ。
ちなみに当該作品が書かれた時、まだ自分は大学生なので上記主張をする権利はギリギリあるかと。

エンタメ作品としてはシリーズの中でも比較的面白い。
義足の歌姫・永遠子や一人本を読む少女・香織のキャラクターは魅力的に描かれているし、NPO団体が発行する地域通貨の話も、紙幣価値とは何なのかを考えさせられる。
全短編に池袋の王様も登場し、アクションシーンなどもバランスがいい。
ドラマ化されていない話が3つあるので、そういった意味でも楽しめる。
特にレイブとドラッグの話「西口ミッドサマー狂乱」は、規模感と疾走感があり小気味いい。

ちなみにドラマ化された表題作は面白くない。
タイトルのネタバレっぷりも意味不明な上、リアリティが一切無い。
自分は作品に過剰なリアリティを求める方ではないが、さすがにこれは酷いと感じた。
失神者が大量に出る「音」より、"ジューダス・プリースト"や"暗い日曜日"などの自殺を助長する「音楽」の方がよっぽどリアリティがある。