中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

森博嗣「すべてがFになる」

14歳のとき両親殺害の罪に問われ、外界との交流を拒んで孤島の研究施設に閉じこもった天才工学博士、真賀田四季。教え子の西之園萌絵とともに、島を訪ねたN大学工学部助教授、犀川創平は一週間、外部との交信を断っていた博士の部屋に入ろうとした。その瞬間、進み出てきたのはウェディングドレスを着た女の死体。そして、部屋に残されていたコンピュータのディスプレイに記されていたのは「すべてがFになる」という意味不明の言葉だった。
(「BOOK」データベースより)
Trial and Error

71点


久しぶりに読んだ本格推理小説
トリックなど含め、比較的真っ向勝負をしているあたりデビュー作の匂いがしていい。
最近の森博嗣の小説に比べるとかなり直球である。文体なども大きく違う。

この小説の中では真賀田四季のキャラクターが面白い。
天才と称される真賀田四季は、俗人的な部分など無いような孤高の存在として描かれている。
また低体温な犀川、お嬢様にして頭脳明晰な西之園も非常にいい味を出している。
ともするとキャラクター小説と言われてしまう所以はこの辺にあるのかなと。

トリックは密室に関しての部分が大きい。
タネとしては反則ギリギリだが、個人的にはセーフ。
本格物としては現実味に欠ける部分もあるが、得てして名作トリックは現実味と机上の空論の隙間にあるものである。
ただタネに対してのヒントなど含め、刺さる読者層が若干絞られている事は否めない。

残念なのは中盤で少し間延びしてしまった事。
登場キャラクターが活かしきれていない事。
露骨なヒントとなる伏線があった事。
それらを除けば本格物として非常に面白かった。