岡崎隼人「少女は踊る暗い腹の中踊る」
連続乳児誘拐事件に震撼する岡山市内で、コインランドリー管理の仕事をしながら、無為な日々を消化する北原結平・19歳。自らが犯した過去の“罪”に囚われ続け、後悔に塗れていた。だが、深夜のコンビニで出会ったセーラー服の少女・蒼以によって、孤独な日常が一変する。正体不明のシリアルキラー“ウサガワ”の出現。過去の出来事のフラッシュバック。暴走する感情。溢れ出す抑圧。一連の事件の奥に潜む更なる闇。結平も蒼以もあなたも、もう後戻りはできない!!第34回メフィスト賞受賞!子供たちのダークサイドを抉る青春ノワールの進化型デビュー。
32点
主人公は男だが、話の中心は少女・蒼以の謎。
それに主人公の過去のトラウマ、連続乳児誘拐事件、正体不明のシリアルキラー“ウサガワ”が絡み、一つの結末をつむぎだす。
ありがちといえば、ありがちな話である。
主人公は非常にネガティブな性格で倫理観も低い。
ただそれが現代の若者の象徴的に書かれているところが今ひとつ納得がいかない。
蒼以のキャラクターも今ひとつ分からない上、その謎が解き明かされても納得感は低い。
疾走感はある。
そしてミステリー要素もある。
現代の心の闇を描こうという方向性も垣間見える。
ただ全体がどうしても薄く感じてしまう。
それぞれの行動に必然性や連続性を感じない。
リアルさをポイントにして書いているのが分かるだけに、余計寒く感じてしまう。
少なくとも「ノワールの進化型」とは言いすぎである。
帯の「凄惨だけど、爽やかです」に関しては嘘の領域に限りなく近い。