中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

横山秀夫「半落ち」

「妻を殺しました」。現職警察官・梶聡一郎が、アルツハイマーを患う妻を殺害し自首してきた。動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首までの二日間の行動だけは頑として語ろうとしない。梶が完全に“落ち”ないのはなぜなのか、その胸に秘めている想いとは―。日本中が震えた、ベストセラー作家の代表作。
(「BOOK」データベースより)
$Trial and Error-hanochi

75点


この物語は自首をしてきているが、殺害からの二日間に関して口を割らない「半落ち」となっている容疑者・梶の秘密を、事件に関わった県警の志木、検事の佐瀬、記者の中尾、弁護士の植村、裁判官の藤林、そして刑務官の古賀の視点を通して解きほぐしていく話である。

視点は非常に面白い。
殺害を自供しながら、その二日間に関して口を割らない不自然さ。
そこには殺害以上の秘密がある。

周りの視点でつむがれていく物語の中で、梶の人格は色々な側面から捉えられる。
極悪非道の男なのか、それとも慈悲深い男なのか。
主人公の人格はほんとうの最後あたりまで明らかにならず、二転三転していく。
その過程は非常に読み応えがあり、横山秀夫の筆力を感じる。

オチに関しては色々と賛否両論あるが、私としてはいいところに落ち着かせていると思う。
この物語は「半落ち」の秘密が最大のオチだが、面白みは主人公の人格を解き明かしていく過程にあるからだ。
林真理子の「落ちに欠陥がある」という批判は全くの的外れに感じる。