中式先攻法ブログ

小説や映画、ドラマなどの感想をダラダラ書いてます。備忘録も兼ねて。

綾辻行人「殺人鬼2 逆襲篇」

あいつはやはり生きていた!双葉山中に潜むあの殺人鬼が、麓の街に姿を現わしたのだ。凄惨きわまりない殺戮の狂宴が、いま再び始まる。他人の“目”になる不思議な能力を持った少年・真実哉との対決の行方は?そして明かされる、驚くべきその正体とは…。ミステリー界に一大衝撃をもたらした、新本格スプラッタ・ホラーの第二弾!あなたはこの恐怖に耐えられるか。
(「BOOK」データベースより)
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48点


あれだけ批判しておきながら殺人鬼の続作を読んでしまった。
結論から言うと、前作より遥かに面白くなっている。

前作は登場人物が最初に出きっており、山というクローズドサークルから脱出しようとした人が次々に殺されていくという極めて一本筋な話だった。
近作は旅行に来た家族のドライブから病院、そして隣接する家へと話は進んでいく。
そうすると前作では全く活きなかった一人称視点が入れ替わるという書き方が、俄然意味を持ってくる。
同じ状況で山に来て、同じように逃げたがっている人を描写するより、場面をうつしながらそれぞれの思惑で動く人々の一人称描写のほうが、より立体的に話を見れるからだ。

また前作とは違い、今回は殺人鬼に対するある種の超能力を持った主人公が存在する。
やはりスプラッターとはいえ、対抗できる可能性を持った人間がいたほうがより話は盛り上がる。
助かるかもという期待感をあおられるし、それがもし裏切られてもより恐怖を浮き立たせるからだ。

前作はマスコミやPTAへのアンチテーゼ的な意味合いで殴り書きした上に、綾辻的トリックをすいっと乗せただけの作品だったが、近作は作品としてしっかりとしたストーリーを組上げて仕上がっている。

オチは途中で想像できてしまったし、全体を通すとありがちなスプラッターな話ではあるが、映画ではなく小説で書く意味を持たせたという意味で、評価できる作品となっていると感じた。

ただ、個人的には殺す人数(登場人物)を減らしてでも、一人一人の話をしっかりと書いたほうが一人称視点の意味があるようには感じた。
その人物をキャラクターづける過去の独白などが急すぎて(彼氏と別れた看護婦の一人称記述などなど)、とってつけた感じで読者が冷めてしまうと同時に、殺される人間に感情移入しろという意図が見え見えになってしまった。